戦術その5であるAttack By Drawing(=ABD)は、相手の攻撃を誘い出して迎撃する、カウンター攻撃のことです。相手の力を利用するカウンター攻撃によって攻撃力は倍増します。そのため、相手に意図的に隙を見せ、そこを相手に先制させてカウンターを取るのです。
ただ隙を見せる、攻撃を誘い出すといっても、「ガードしている手を少し下げる」、「わざと相手のコンビネーションにリズムをつけさせる」、「自分の動きのリズムを一瞬変え、相手に反射的に攻撃を出させる」、「攻撃をもって、相手に攻撃をうつらせる」など、様々な手法があります。
ブルース・リー師祖はこのABDを非常に得意としていました。記録フィルムには、ダン・イノサント師父やジェームズ・リー師父を相手にしたスパーリングで相手のジャブを誘って、リードストレートやハイキック(!!*7)でABDカウンターを決める師祖の姿が残されています。師祖がスパーリングで(はたまたスクリーンでの格闘シーンで)前手のガードを下げたスタイルを取ることが多いのは、このためでもあるのです。
*7: あたりまえですが、ハイキックはジャブよりも動作が大きく、段違いに遅いはずの技です。不利な技を用いてABDを決める、ということの難し さは少しでも格闘技・武道を学んだに方は理解頂けるでしょう。しかも、師祖は同じスパーリングで、同じABDを何度も決めるのです!これは、技自体のスピードに加え、よほどタイミ ングを読み切れていないと出来ない技です。
※ここでは、相手のジャブやストレートを誘ってのABDアタックを紹介します。
Fig.5-3
相手のリードハンド・ジャブを誘い、右にボブしながらアッパーカットを打ちます。
Fig.5-1
相手のリードハンド・ジャブを誘い、左にスリップしながら直拳を叩き込みます。
Fig.5-4
相手のリア・クロスを誘い、後方にスウェーバックしながら相手のヒザに向けて横蹴りを出します。
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Fig.5-2
相手のリードハンド・ジャブを誘い、体を傾けて射程外に出ながら、その動きを利用して金的への蹴りを繰り出 します。